日本アントロポゾフィー看護協会は、国内に於いてアントロポゾフィー看護を学ぶための場を設けています。そこには、初めて学ぶ方のための「基礎コース」と、基礎コースを修了した方を対象にした「スペシャリストコース」があります。当会が主催するこの二つのコースは、ゲーテアヌム精神自由大学医学部門に於いて、アントロポゾフィー看護師を養成するコースとして公認されたものです。
その内の「基礎コース」概要を以下にご紹介します。
アントロポゾフィー看護師養成のための基礎コース
「国際アントロポゾフィー看護ゼミナール 基礎コース」
このコースは、ホームケアコースの内容を含みますので、看護師資格をお持ちでなくても、医療系の国家資格をお持ちの方は受講が可能です。
看護師コースとホームケアコースは修了までに必要な単位数が異なります。下記、内容の詳細の中で、それぞれの単位数を表記していますので、参考にしてください。
- 看護師コース:看護師、あるいは准看護師の免許をお持ちの方が対象となります。(修了までに365単位)
- ホームケアコース(HCコース):医療系の国家資格をお持ちの方が対象となります。(修了までに200単位)
基礎コースの目的:
- 看護師コース:アントロポゾフィーの観点に立った全人的な視点で人間を理解する。それを基盤とした看護が行える。 また実践を深める中で、看護師自身が成長する。
- ホームケアコース:アントロポゾフィーの観点に立った全人的な視点で人間を理解する。それを基盤とし、自分の活動場所に於いて可能な範囲で拡張した職務が行える。また実践を深める中で、 受講者自身が成長する 。
基礎コースの内容
- 到達目標
- アントロポゾフィー医学・看護の基礎となるアントロポゾフィーの基本的世界観と人間観を理解し、その用語/考え方が説明できる。
- アントロポゾフィー的人間観で患者を理解し、ニーズを把握し、必要なケアが選択でき、実践(リズミカルアインライブングおよび湿布など)ができる。
- 同時に自分の限界が理解でき、必要なときに助言を求めることができる。
- 人間は誰もが成長(進化)する存在であることを理解し、自らも常に振り返りをすることで成長する。
- 日本の看護師資格を持つものは、コースの修了によって「アントロポゾフィー看護師」の資格を得る
- HCコース参加者は、修了によって「コース参加者」の証明を受け取ることができる
- 内容の詳細
- 人間と自然に対するアントロポゾフィー的理解
(看護コース〈Ns〉:40,ホームケアコース〈HC〉:38)
- ) 四層構造の現れ:人間の四層構造、四大元素、四つの気質
- 自然の中にある四大元素を理解し、人間との関連を考える。さらに、人間を構成するものを理解し、その本質に迫る。
- 人間に現れる四つの気質を考察する。
- ) 三層構造の現れ:霊/魂/体、三原理、機能的三分節
- 私たちは世界とどのように結びついているのか考える。
- 三分節とは何か、またその背後にあるものは何か。人間の解剖・生理・人体の諸機能を、人間の全体性/機能的側面で捉える。
- 自然界の三原理(塩-水銀-硫黄)の理解を通し、人間・植物の対応を知る。
- ) 七層構造の現れ:人生の七年周期、七つの生命プロセス/七つの学習プロセス、七惑星/七つの臓器/七つの金属
- 人間の健全な発達の原型、7年ごとの発達周期を見る。
- 人間にみる“七つの生命プロセス”を学び、学習のプロセスの中にその対応を見つける。
- “七つの学習プロセス“を自分たちの学習に照らし合わせて実践する。
- 地球を取り巻く七つの惑星と、人体の持つ七つの臓器(マクロコスモスとミクロコスモス)の照応、さらに七つの金属について考察する。
- ) 12層構造の現れ:黄道十二宮と12感覚
- 地球を取り巻く黄道十二宮と人間の関わり/人間の持つ12の感覚を学ぶ
- ) アントロポゾフィーにおける死生観:輪廻転生とカルマ、死のプロセス
- 人間の死のプロセスを学び、輪廻転生やカルマについて考える。それによって、人間存在の本質(精神の核)は唯一無二の自由な存在であり、輪廻転生を通して発展していくものであることを学ぶ。
- 人間と自然との関わりを『魂の暦』を通して感じる。
- 地球、その中で共に進化してきた人間について考えることで、人間と動物/植物/鉱物との関係について考える
- 健康と病気についてのアントロポゾフィー的理解
(Ns: 6,HC: 6)
- ) 健康と病気
- 病むとは何か、健康とは何かをアントロポゾフィーの側面で考える
- ) 両極性、形態と構造、異化と同化、炎症と硬化
- 人間にみる二つの極の視点から、病との関わりを見る
- ) 人生(バイオグラフィー)の中の経験/誕生、苦悩、痛み、死など
- 実在する過去の人物の、人生に生じた実りや苦悩を丁寧に辿る事で、身体・魂・精神のそれぞれの発達とメタモルフォーゼを考える
- アントロポゾフィー看護の概念
(Ns:54,HC:42)
- ) 植物の理解:植物観察(ゲーテ的観察)による植物の理解、植物由来の薬の理解と、アントロポゾフィーに特有の薬剤について知る
- 実際の治療・看護手当に用いられる様々な薬用植物を、ゲーテ的観察を通して理解する。植物の本質に近づくことで治癒力の理解に繋がり、素材との協働が可能となる。
課題(看護コースのみ):実際に時間をかけて植物を観察し、各自が記録を残す - マクロコスモスとミクロコスモス、惑星と臓器と金属の意味を知る。
- 更に、外用手当に用いられる金属製剤を学び、実際の手当を学ぶ(看護コースのみ)
- アントロポゾフィー薬剤に用いられる基本的知識を学ぶ。また、アントロポゾフィー医療に特徴的な薬剤を知る。
- ) 看護に必要な健康概念を学ぶ
- 衛生発生・自然発生・健康創生論
- 温かさと動きの重要性、健康で持続的な栄養
- 12感覚と照応した、「12の看護の所作」を学び、実践への手がかりをつかむ。
- 看護過程-四層構造・三分節に則した患者さんの観察から評価/介入のための原則を学ぶ
- アントロポゾフィー看護師としての心構え
- プロフェッショナリズム、協働、患者の権利
(Ns:35,HC:16)
- ) アントロポゾフィー看護の歴史を知る
- アントロポゾフィー看護の歴史と看護者に与えられた<メダルの物語>を知る
- リズミカルアインライブングの歴史を知る
- ) 能力を促進する方法としての芸術活動
- オイリュトミーの体験をする:母音と子音、黄道12宮、惑星
- 各種療法の体験をする(ゼミナール中に体験できないものは各自機会を設ける)
- ) チーム連携での活動
- 医療従事者との協働
- ) 内的発展と進歩の道としてのアントロポゾフィー看護
- 自己成長のための瞑想・修行について知る。
- 「看護職のための祈り」を共有し、内的発展とセルフケアに繋げる
- IFAN(アントロポゾフィー看護のための国際会議)、ICANA(アントロポゾフィー看護協会国際会議)について知る。
- ) 専門職としての発展と研究、患者の権利と倫理
- アントロポゾフィー的視点を生かした研究の筋道を知る
- 患者の権利の視点から、医療者が守るべき法について確認する
- 症例の検討とディスカッションを通して、実践を積み上げる
- アントロポゾフィー看護の応用実践
(Ns:105,HC:76)
- ) セルフケア能力をサポートする
- ) 湿布・入浴等 外用療法
- 具体的な、以下のような外用療法の理論と具体的方法を学ぶ
ハーブティーの熱い湿布、オイル湿布、その他植物素材や金属軟膏等を用いた湿布
ハーブティーによる吸入
ハーブティーの選び方 - ) リズミカルアインライブング
- ゼミナールに於いて部分アインライブングを学ぶ。更に仲間と練習を重ね、技術の定着を図る
- 部分アインライブングの理論/効用を学び体感する
- ゼミナール最終回に於いて、全身アインライブングが実践できるように学ぶ
- ) 外用療法に用いる素材の応用と禁忌
- 素材の本質の理解に立ち、外用手当への具体的な応用を学ぶ
- 療法における禁忌を学ぶ
- ) 外用療法に於ける温かさ/リズム/休息
- 療法における大切なポイントを理解し、具体的実践に生かす
- 環境の整え方から記録に至るまで、その重要性を理解し実践できるようにする
- ) 特定の人生の状況における看護ケア
- 産後、幼児期、老年期、終末期のそれぞれに応じた看護ケアを学ぶ
- 人生の危機に有る人、トラウマを抱えた人の理解と、その看護ケアを学ぶ
- ) 特定の領域における看護ケア
- 精神的或いは心身的な病気、発達障害、認知症について取り上げ、アントロポゾフィー的な理解を深め、その看護ケアを学ぶ
- 「痛み」について理解を深める
アントロポゾフィー医学の基本となる世界観、人間観を理解する。自然界の力、宇宙からの力にどのようなものがあり、私たち人間はそれら諸力とどの様な関係性を持ち、どのような影響を受けながら生きているのかを考える。
基礎コースの構成
上記内容を、基本的に5月と8月のゼミナールに於いて受講し、更に1~2か月に1度のオンライン講義を受講することで看護師コース240単位、ホームケアコース178単位となる。
また、自己学習として
- 個人またはグループで実技の練習とレポート等の提出
- 学習日記をつける
ここからは看護師コースのみ
- 修了までにリズミカルアインライブング30例、湿布15例のケースレポートの提出
- メンターによるグループ指導、個人指導
- 修了のための実技試験と修了レポートの提出
以上、ゼミナールと個人学習で総計:看護師コース365単位、ホームケアコース200単位が必要単位となる。(1単位=45分)
講義は、アントロポゾフィー看護/リズミカルアインライブング スペシャリスト2名以上が同席する講義によって構成される。
現在計画されている基礎コース第4期の日程は以下の通り。ただし具体的な日程も変更の可能性がある。
2025年
5月2日~6日 4泊5日 会場:豊田市あげつまクリニック
6月14日(土)15日(日)午後にOnline講義
8月22日~24日 2泊3日 会場:豊田市あげつまクリニック
10月?日(土)、12月13日(土)午後にOnline講義
2026年
2月、3月各1回、土曜日午後にOnline講義
5月(日程未定) 4泊5日 会場:豊田市あげつまクリニック
6月いずれかの 土曜日午後にOnline講義
8月(日程未定) 3泊4日 会場:豊田市 あげつまクリニック
⇒ホームケアコース修了
以下、看護師コースのみ
2026年9月~翌年3月までの間に 土曜日午後のOnline講義を3回
2027年5月 4泊5日 会場:豊田市 あげつまクリニック
⇒看護師コース修了