当協会のプロフィール
日本国内では容易には学べない、「アントロポゾフィー看護」を学びたいと希望する有志の看護職の者たちが集い、この会を立ち上げ、海外からの講師を招いて実践的なゼミナールの開催するなど、学びの機会をつくってきました。
アントロポゾフィー看護とは
アントロポゾフィー医学は、20世紀初頭にルドルフ・シュタイナー博士が創始したアントロポゾフィー(人智学)の考え方を基に、イタ・ベーグマン医師の協力を得て創始されました。その後ヨーロッパで発達したこの医学は、人間を体、魂、精神をもつ霊的な存在であるとの観点に立ち、自然科学的な考えかたと精神科学的な考え方の統合によって、単に肉体だけでなく、心魂や精神を持つ存在として人間を総合的にみて、従来の医療をさらに拡張した医療を提供しようとするものです。
アントロポゾフィー看護は、このアントロポゾフィー医学を基にした看護です。より広い観点から病を持つ人々をみて、その人々をより理解し、その治癒力を最大限に高めるための看護をしていこうとするものです。
アントロポゾフィー医療について
アントロポゾフィー看護ゼミナール 概要
日本アントロポゾフィー看護協会は、国内に於いてアントロポゾフィー看護を学ぶための場を設けています。
そこには、初めて学ぶ方のための「基礎コース」と、基礎コースを修了した方を対象にした「アドバンスコース」があります。
当会が主催するこの「基礎コース」は、ゲーテアヌム精神自由大学医学部門に於いて、アントロポゾフィー看護師を養成するコースとして公認されたものです。その概要を以下にご紹介します。
アントロポゾフィー看護師養成のための基礎コース
看護師、あるいは准看護師の免許をお持ちの方が対象となります。
A. 基礎コースの目的:
アントロポゾフィーの基本的な人間観と世界観、医学・看護に関する基礎知識を学び、その認識に立ってアントロポゾフィー看護の技術を習得する。受講者は、セミナー期間に留まらない学習(自己学習)を深めることで、患者の目に見えない部分も含めた全体像を把握し、それを基に、より全人的な看護ができるようになる事を目的とする。
B. 基礎コースの内容
I. 到達目標
1. アントロポゾフィー医学・看護の基礎となるアントロポゾフィーの基本的世界観と人間観を理解する。
2. アントロポゾフィー医学・看護の基本的な理論を理解し、基本的な看護技術(主に外用手当)が施術できる。
3. アントロポゾフィー看護を実践していく上で必要な、看護師自身の発展のための基本的な修練の方法とセルフケアについて理解する。
II. 内容の詳細
1. 人間の本質と、それに基づく医学
アントロポゾフィー医学の基本となる世界観、人間観を理解する。自然界の力、宇宙からの力にどのようなものがあり、私たち人間はそれら諸力とどの様な関係性を持ち、どのような影響を受けながら生きているのかを考える。
A) 四層構造:人間の四層構造、四大元素、四つの気質
自然の中にある四大元素を理解し、人間との関連を考える。さらに、人間を構成するものを理解し、その本質に迫る。
人間に現れる四つの気質を考察する。
B) 三分節:人間の三分節、二つの極とそれを取り持つもの。健康と病気の理解。
三分節とは何か、またその背後にあるものは何か。人間の解剖・生理・人体の諸機能を、人間の全体性の中で捉える。
三分節の理解の上に立って、人間の健康とは何か、病気とは何かを考える。
R.シュタイナーの講義「見えない人間」の、考え方を知る。
C) 七層構造:人生の7年周期、七つの生命プロセス・七つの学習プロセス、七惑星・七つの臓器・七つの金属
人間の健全な発達の原型、7年ごとの発達周期を見る。その中で、身体・魂・精神のそれぞれの発達とメタモルフォーゼを考察する。
人間にみる“七つの生命プロセス”を学び、学習のプロセスの中にその対応を見つける。
“七つの学習プロセス“を自分たちの学習に照らし合わせて実践する。
地球を取り巻く七つの惑星と、人体の持つ七つの臓器(マクロコスモスとミクロコスモス)の照応、さらに七つの金属について考察する。
D) アントロポゾフィーにおける死生観:輪廻転生とカルマ、死のプロセス
人間の死のプロセスを学び、輪廻転生やカルマについて知る。それによって、人間存在の本質(精神の核)は唯一無二の自由な存在であり、輪廻転生を通して発展していくものであることを学ぶ。日本の終末期医療における現状とアントロポゾフィー医療の実践を知る。
アントロポゾフィーを基礎にした司祭の話を聞き、人間の生と死を、身体面・精神面の双方から捉える。
E) 黄道十二宮と12感覚
地球を取り巻く12の星座と人間の関わりについて考える
人間の持つ12の感覚を学ぶ
F) 臨床:アントロポゾフィーの観点からの疾患の理解
身体における四層構造・三分節を医療現場でどう捉えるか、疾患をどのように理解するかを、アントロポゾフィー医師から学ぶ。
特に、惑星・臓器・金属の理解に照らして、心身疾患を理解する。
2. 人間を取り巻く世界の理解と薬学
A) 植物の理解:植物観察(ゲーテ的観察)による植物の理解、植物由来の薬の理解
植物の観察(ゲーテ的観察)を通してその本質に迫る。実際に、時間をかけて植物を観察し、記録を残す。
実際の治療・看護手当に用いられる様々な薬用植物を理解する。植物の本質に近づくことで、その素材の治癒的力の理解に繋がり、素材との協働が可能となる。
B) 金属の理解:ミクロコスモスとマクロコスモス、金属製剤の理解
惑星・臓器の関わりから、対応する金属の意味を知る。外用手当に用いられる金属製剤を学ぶ。
C) 薬学概論:三原理を含む、アントロポゾフィー製剤の基本的理解。
治療の歴史的流れを知り、アントロポゾフィー医学の基本的考え方を知る。
三原理(塩-水銀-硫黄)の理解と、人間・植物の対応を知る。
アントロポゾフィー薬剤に用いられる製剤方法の基本的知識を学ぶ。また、アントロポゾフィー医療に特徴的な薬剤を知る。
3. アントロポゾフィー看護の理論と実習
A) 総論
環境の整え方、記録、共同作業
四層構造・三分節に則した観察の手がかりを学び、症状の観察・日常生活の観察に応用することを学ぶ。
アントロポゾフィー的視点に立った病気の理解に立ち、様々な症状に対するアプローチを知る。
終末期と死後の看護、痛み・苦痛のケアの実際を学ぶ。
IFAN、ICANAについて知る。
B) 黄道12宮と人間の12感覚、12の看護の所作
12感覚と照応した、「12の看護の所作」を学び、実践への手がかりをつかむ。
C) 外用手当の理論と実習:アントロポゾフィー医療に特徴的な様々な外用手当を学ぶ。
医師の処方を理解し、素材の特徴に則した準備ができ、患者の観察を含めた適切な実施ができることを目指す。
1. リズミカルアインライブング※1
アインライブングのための理論を学び、用いられる素材の理解を深める
全身アインライブング、部分アインライブングの実習をする。
※1 全身アインライブングの施術認定を取得するためには、1年間の自主学習の積み上げが必要です。具体的には、指定されたレポートの提出と、1年後の実技試験の合格が必要となります。
2. 巻き湿布・当て湿布
湿布の理論を学び、用いられる素材の理解を深める
様々な湿布を体験し、実習する。
(セミナー期間中には、実技のための時間が充分ではありません。そのため、参加者同士によるその後の自主学習で、各自が実践の力を積むことになります)
3. その他のケア
足浴、ハーブティ、吸入などについて、その理論を学び、実習をする。
D) 看護者の発展
「魂の暦」「サマリタンコース」について学ぶ
自己成長のための瞑想・修行について知る。「看護師のための祈り」、看護者に与えられたメダルの話を知る
看護師に必要なセルフケアについて知る
E) 自己学習の発表と実技テスト
自主学習として取り組んだ学びを、セミナーの中で発表し共有する。
全身アインライブング認定施術者となる事を希望する場合は、実技試験を受験する。
4. アントロポゾフィー医療における各種療法
アントロポゾフィー医療の中で処方される各療法について理論を学び、患者に説明できる。これらの療法は、単なる体験に留まらず、受講者自身の豊かな発展のために、折に触れて体験・受講することが勧められる。
A) オイリュトミー療法
B) 音楽療法
C) 絵画・造形療法
D) バイオグラフィーワーク
C. 基礎コースの構成
上記内容を200単位※2以上の時間をかけて履修し、さらに各モジュールで出題された課題を提出することで「基礎コース」の修了となる。
講義は、アントロポゾフィー看護師養成の教育資格を持つ、アントロポゾフィー看護スペシャリスト2名以上が同席する講義によって構成される。
講義の中には、看護以外のスペシャリスト(医師、療法士、司祭等)による講義も含まれる。
(※2:1単位=15分の休憩を含む60分)
現在開催されている、基礎コース3期の主な内容と、今後の予定は以下の通り。
第1モジュール
人間の本質(四層構造、三分節を中心に)、植物の理解、アインライブングの理論と実習、オイリュトミー療法など(65単位)
3期 2018年10月27日〜2018年11月2日 (既に終了)
第2モジュール
人間の本質(誕生と死、12感覚を中心に)、12の看護の所作、湿布の理論と実習、湿布に用いる植物の理解、バイオグラフィーワーク(59.5単位程度)
3期 2019年4月27日〜2019年5月3日開催予定 (受付終了)
第3モジュール
マクロコスモスとミクロコスモス(7つの惑星・金属・臓器を中心に。またこれらと照応した心療内科)、絵画療法など(61単位程度)
3期 2020年4月下旬 (未定)
※初めての方はこのモジュールには参加することができません。過去に、一度でも基礎コース 第1、2モジュールを受講した方が対象となります。
第4モジュール
特別な手当、看護者の発展、音楽療法の体験、ケーススタディの発表 基礎コース修了式 (19単位程度)
3期 2021年4月下旬(未定)